こんにちは、にしのま(Nishinoma)です。
今回は、私が大腸がん(直腸がん ステージ3a)の手術後に受けた抗がん剤治療「ゼロックス療法(xerox療法)」概要を、医師からの話や実体験をふまえてまとめました。
ゼロックス療法について、私が受けた際の治療の流れ、かかった費用、生じた副作用、2年経過後の後遺症の状態を、網羅的に分かる内容となっています。
私は2017年に大腸がんが見つかり、入院・手術をしました。
診断は直腸がん ステージ3aとなり、半年の抗がん剤治療を受け、現在は経過観察中です。
闘病の概要は下記記事にまとめています。
本投稿は、その実体験に基づいて残している記録や記憶をもとに書いています。
全ての方が同じ副作用に襲われるとは限りませんが、「私の場合はこうだった」という話でご覧ください。
■ゼロックス療法(XELOX療法)の概要
ゼロックス療法(XELOX療法)は、飲み薬の「ゼローダ(主成分:カペシタビン)」と点滴の「エルプラット(主成分:オキサリプラチン)」を併用する化学療法です。
(ゼローダ、エルプラットの薬名は、ジェネリックだと違う名前になるかもしれません)
名前はプリンターっぽいですが、併用する薬剤の名前をくっつけたもので、
XEL = カペシタビン(ゼローダ) + OX = オキサリプラチン → XELOX
が由来とされます。
■担当医から説明を受けた特徴を(一部)
私が治療を始める際に受けた説明の、ざっくりした内容は次のとおりです。
- 2つの薬を組み合わせることで効果が上がるため、併用する
- 色々ある抗がん剤の中では、そんなに強い部類ではなく、毛髪が抜けて無くなるレベルではない。(抜け毛は増えましたが…。)
- 再発防止のため、体中に散った微細ながん細胞の攻撃する補助化学療法として使われることが多い
- 点滴をする1日以外は病院に来なくていいので、来院の負担が少ない
- 効果が高くて非常に良い薬だが、抹消神経を傷つけるのが困りもの
- 食事に特に制限はなく、いわゆる「健康な食事」をなるべく心掛けてくれればよい
とのことでした。
■ゼロックス療法は、3週間×8クール繰り返して行う治療方法
ゼロックス療法は、21日×8回で計168日と長期間かけて行います。
エルプラットの点滴を1日目とし、同日の夜からゼローダの服薬を開始。
朝と夜、14日間ゼローダを飲み続けた後、7日間休薬します。
エルプラットは、副作用として吐き気を生じるらしく、吐き気止めの薬も併用されます。
1日目は点滴で、2日目から「デカドロン」という錠剤を飲みます。
休薬の意味は、抗がん剤の副作用で正常な細胞にもダメージを与えてしまうため、その細胞や体力などの回復のために行います。
この3週間を1クールとし、8回繰り返す流れです。
回数を重ねるごとに薬剤のダメージが蓄積されていくため、次第に強くなる副作用との約半年に亘る長い戦いとなります。
2022年7月追記
最近は、8クール/半年ではなく、4クール/3カ月で行うケースも増えているようです。
どちらになるかは、再発の可能性を考慮して判断するとのこと。
お話を伺った方には、医師が4クールで提案してきたところを、様々な事情から自ら希望して8クール行った方もいらっしゃいます。
■エルプラット(オキサリプラチン)の点滴
各クール初日の点滴は、もちろんですが病院で受けます。
点滴されるエルプラットは、細胞増殖に必要なDNAに結合することで、DNA複製阻害やがん細胞の自滅を誘導し抗腫瘍効果をあらわす薬です。
点滴自体は数時間で終わりますが、このエルプラットは点滴中から速攻で、血管痛などの副作用を生じますので、私のように働きながらの治療であれば、会社を休むのが賢明です。
ゼロックス療法は、この点滴以外は服薬になるため、通院の負担が少ないというメリットがあります。
点滴の流れ
流れは、吐き気止めの薬剤を15分、抗がん剤(オキサリプラチン)で2時間、点滴チューブ内の薬剤を流し込むための生理食塩水を5分ほど点滴し、合計で約2時間半かかります。
その間、15分おきに血圧・体温・血中酸素濃度を調べて、体調に異常がないかを頻繁に観察します。
基本的に動けないので、暇つぶしは必須です。
点滴をしているので、スマホなど基本的に片手で出来ることに限られますが。
前述しましたが、エルプラットは強力で、点滴してるうちから副作用が速攻きます。
点滴が始まってしばらくすると、段々と針が刺さっている周辺がビリビリと痛み始めるのですが、これは薬剤の刺激による血管痛らしいです。
温めると血管が広がって痛みが緩和されるそうで、レンジで温める湯たんぽみたいなのを腕に巻いて受けます。
実際、何度目かの点滴から、温めている部分より、温めていない部分に強く痛みがありましたので、腕全体を温めるようにすると、多少は痛みがマシになると思います。
行っている病院では部分的にしか暖められないため、補助として自前のカイロを握って受けました。
この血管痛、1クール目の時は、点滴の終了後に何となく腕を組んだときにビリビリしていると気づいたレベルで、数時間後には気づけば治まっていましたが、回数を重ねるにつれて、点滴開始の半ばくらいでビリビリと痛みが始まり、点滴を終えた後も腕の痛みもなかなか消えなくなりました。
そして、副作用は血管痛のみならず、風が当たると冷たく感じたり、冷たいものに触るとビリビリとした痛みを生じるようになります。
さらに私の場合、回数を重ねるにつれ、点滴から3日くらい経つと強烈な倦怠感や頭痛に襲われました。
点滴は決まって火曜日だったのですが、金曜の午後から段々とダルさが始まり、夜頃にはフラフラ。土曜は起き上がれず一日寝て過ごすぐらい。
それが、少しづつ楽になりつつ日曜の夜くらいまで続きました。
でも、月曜朝には嘘のようにスッキリ普通に。
この副作用のサイクルが分かってから、点滴から3日後くらいは非常に鬱でした。
人により副作用の強さは異なるそうですが、個人的には「エルプラット、パねぇ…」という感じでした。
ちなみに、エルプラットはヤクルト社製。
調べたところ、ヤクルトって結構がんの薬を扱っているんですね。
また、白金製剤に分類される抗がん剤らしく、白金(プラチナ)が入っているのか、すごく高い。この点滴は、1発で4万ぐらいかかります…。
■ゼローダ錠を服用する
エルプラットの点滴を受けた夜から、錠剤のゼローダ錠の服用を始めます。
最初の2日だけ、「デカドロン」という補助薬も飲みました。
ゼローダ錠の量は身長や体重で決まり、178cm/70kgの私の場合は1回6錠でした。
これを朝夕飲みます。個数が多くて、さらにデカくて飲みにくい。
デカドロンは、小さいけど1回8錠。最初の2日間は朝と夜に14錠という苦行です。
朝っぱらから14錠飲む、モーニングゼローダはキツかったです。
そしてエルプラットのように、ゼローダ錠も高価です。
1錠36円程度(当時)と大したこと無く見えるのですが、一回6錠で朝晩、14日ですので、
36円 × 168錠 × 3割負担 = 18,140円。
数の恐ろしさ。点滴と合わせると、1クール6万円ぐらい。
命を拾うためとはいえ、毎月6万を払う生活は、なかなか厳しいものがあります。
以上、点滴と服薬・休薬を8回繰り返すのが、ゼロックス療法の流れとなります。
■製薬会社のハンドブックでも詳しく分かります
私が通う病院では、治療を受ける際、ゼローダハンドブックというのをもらいました。
ゼロックス療法の概要や受ける際の注意や副作用について、まとめられていますので、もらえなかったらダウンロードしてみてください(この投稿の意味が…^^;)。
・中外製薬 − ゼローダ・ハンドブック
https://pat.chugai-pharm.jp/xel/clB/cnt/hnd/01_001.html
後半のページは毎日の体調や、体重などを記入できるため、記録しておくことで副作用の変化を確認することもできますし、医師の診察の際に持参すれば、異常があった日を思い出すのに役立ちます。
別の視点からの、エルプラット(オキサリプラチン)を受ける方への冊子も下記で落とせるようです。
・東和薬品 オキサリプラチンの治療を受ける方へ
https://med.towayakuhin.co.jp/medical/product/fileloader.php?id=45040&t=0
■異常があれば中止も
副作用があまりに酷い場合や、体調に異常を生じた場合は中止になります。
私も、初回の1クール目の途中で下血したため、ゼローダの服用を止められることに。
その時は1日で下血が治まったため、休薬を続けた後、日程通り2クール目を始めました。
また、何クール目かになって副作用がキツくなってきて、診察の際に担当医に「副作用がめちゃくちゃキツイ」と言うと「あまりにツライなら、辞めることもできますが…」と言われました。
途中で止められるか…と耐えて完走しましたが、言うまでもなく自分の意志で止めることもできます。
副作用が辛くて途中で辞めた方が取引先にいますが、再発を繰り返しています。
抗がん剤を受けても必ず再発が防げるとは限りませんが、辞めたいと思っても、よく考えた上で判断してください。
もちろん、体に異常をきたした場合は、即中止するべきです。
■【抗がん剤】ゼロックス療法(XELOX)の費用
続いて医療費ですが、先述のとおり、薬がクッソ高いです。
3割負担にもかかわらず、オキサリプラチンの点滴で4万円かかります。
さらにゼローダ錠は1粒36円(当時)で、6粒×朝夕×14日のため、168錠。36円 × 168錠 × 3割負担 = 18,140円。
1クール、つまり3週間おきに約6万円飛びます。
それが×8回ですので… 厳しいです。
ということで、約半年で抗がん剤治療のために払ったお金の合計は
48万7,127円
でした。
費用の明細は、下記の別記事で詳しくまとめています。
■【抗がん剤】ゼロックス療法(XELOX)の副作用
副作用がどのように出るかは、個人差が大きく、受けてみないと分からないそうですが、一般的に、治療が進むにつれ薬剤によるダメージが重なり、副作用が強くなっていくと説明を受けました。
高齢などほ効果は出にくく、副作用は出やすくなるという話もあります。
私も治療初期は副作用があまり出なかったので、「副作用って、こんなものなら楽勝〜」と思っていましたが、治療が進むにつれ段々副作用が強くなってきてガッカリしました。
副作用は色々発生しますが、ほぼ全員に症状が出る「手足症候群」と言われる皮膚への異常と、冷たい刺激への異常反応が主なものです。
冷たいものに触れるとビリビリと痛んだり、飲んだりすると痛みを感じます。
また、手や足に痛みや黒化等の症状が出る。
この症状を出し過ぎると、悪化して治療が終了した後も症状が中々解消されません。
だから、手足を保湿したり靴下・手袋等で保護し、冷たいものに触れないように工夫していくことが大切です。
治療初期は症状が少ないですが、回を重ねるごとに厳しくなっていく症状の緩和にも繋がることから、早めの対応を勧めます。
副作用として私が体験したものを羅列すると、
- 点滴時の血管痛
- 点滴数日後の倦怠感と頭痛
- 冷たいもの触ると痛い
- 手足のしびれ
- 脱毛
- しみ、全身が黒ずむ
- 腹の調子が悪い
- 足の親指の爪のキワが巻爪のように刺さって膿む
- 指先の感覚がなくなる
- 爪がはがれそうな感覚
- 頭が回らない
- 全身かゆい
- 手足のしびれ
- 平衡感覚の失調
- 指紋がなくなる
- 足の裏が歩けないレベルで痛い
- 唾液が出るとき痛い
などなど、副作用のバーゲンセールです。
副作用が軽く済む方法が知りたいところですが、多分、裏技はありません。
ほぼ全員に副作用が生じており、自分には副作用が出ないことを期待するのは現実的ではありません。
私は気持ちを切り替え、「生じてしまった副作用をどのように耐えるか」と、攻略法を考えながら日々を乗り切っていきました。
まぁ慢性症状になると、それが普通になって、かえって気にならなくなってきます。
■抗がん剤を受けるか受けないかという選択
抗がん剤は、がん細胞を攻撃する反面、自己の細胞も痛めつけてしまう諸刃の刃。
副作用の恐れから、抗がん剤を受けない方もいます。
また、副作用はあるのに抗がん効果が薄かったり、治療を受けても再発する場合もある。
治療後に再発しなくても、抗がん剤のお陰だと証明する方法もないので、受けなくても再発しなかった可能性もあります。
そのため、私も抗がん剤治療を受けること自体、非常に悩みました。
しかし、受けずに再発してしまった場合、とてつもない後悔が待っていると思い至り、治療を受け、完遂することに決めました。
■おわりに:ゼロックス完走から2年経っての感想
以上、私の経験より抗がん剤治療「ゼロックス療法」の概要をまとめました。
私は2017年9月から2018年2月にかけ、逃げ出したい日も多々ありましたが、ゼロックス療法を8クールを無事受けきりました。
達成感と開放感に清々しい気分ではありましたが、8クール受けて積もり積もった抗がん剤の副作用がピークに達しており、体中がボロボロでした。
・2年経ち、苦しんだ後遺症は大体治った
8クール終了後も、しばらく副作用が治まらずに後遺症に悩みましたが、2020年3月現在、大半の副作用は治まりました。
人により後遺症の治癒具合は異なるとは思いますが、私の場合は、
- 痺れは、1年半ぐらいたってから一気に気にならなくならいました。
- シミは、半年ぐらいで皮膚がむけて取れました。
- まだ微妙ですが平衡感覚戻ってきました
- 冷たいものも平気。アイスもガンガン食えます。
- 指紋は半年ぐらいで復活しました
- 当時あった体中の痛みは、気づけばなくなっていました。
- 全然頭が回らなかったのが、このブログを書ける程度に考えられるようになりました
あと抜け毛は減って、毛量が回復したように思えますが、加齢でハゲてきてるのと区別がつきません。そもそもハゲてきて抜けてた可能性…。
とまぁ、約二年経って、ほぼ回復した気がします。
少々残っていると感じる部分は、
- たまに全部の指先が痛くなる
- トイレ(大)が近い
- バランスが少し取りにくい。
- 足の裏が、まだちょっとピリピリする
ぐらい。
また経過観察では、血液検査は異常なし。
腫瘍マーカーの数値も正常の範囲で安定しており、CTでも特別異常は見つかっていません。
これが抗がん剤のお陰である保証はありませんが、今のところ結果オーライ。
結果、「受けといて、まぁよかった」という感想です。
標準治療はお安い標準コースということじゃない
ゼロックスは、国が保険適用とし、科学的根拠に基づいて推奨する最良の治療である「標準治療」にあたります。
が、「標準」というと「上級」や「高級」がありそうです。
そのため、お金持ちが「特別な治療」を求めて民間療法に手を出して、効果がないまま時間を浪費し、悪化して手遅れになり亡くなるという話をどこかで聞きました。
半年に及ぶ治療で、50万近い出費。効果があるという保障もないあげくに、副作用でつらい思いをする。
なかなかひどい。進んで選びたくはない仕様です。
しかし結局のところ、医者が勧める治療法が一番現実的で、一番治癒する確率が高いとされる治療でもあります。
私個人としては、嫌な経験から町医者は信用していないのですが、がんのような先進医療を扱う大きな病院の場合、医者が勧める治療を素直に受けるのが、回復の一番の近道と考えます。
そもそも、超高偏差値の医学部に入れる能力があり、日々多くの患者や症例を観ているプロである医者の判断より、ググって自分好みの情報をかき集めた程度な素人の自分の判断を優先するとか、客観的に見ておかしいと思うからです。
もちろん、もっと最先端で良い治療があるかもしれず、ゼロックスがベストな選択とは言い切れません。
最終的には自分の意志で、金銭的、地理的、時間的な制約を鑑みて、どこかに賭けるしかありません。
よく考え、後悔のない治療をしてください。